スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【コードギアス】TURN25.5「粛清 の 咲世子」【二次創作】

匿名掲示板の某スレに投下したSSです。数年ぶりの二次創作。
……まあ、そうしたくなるほどに黒の騎士団の結末が
腹に据えかねたということで。
==================================================




『本日は、扇首相にお話をお伺いしたいと思います』

美貌のニュースキャスター、ミレイ・アッシュフォードが口を開く。
首相官邸に切り替わるカメラが、ボリュームのある前髪を映し出した。

そこに居た日本国首相は笑顔でこそあったが、
その鼻をすっぽりと覆うように大きな絆創膏が貼られていた。

ミレイの目が少しだけ見開かれる。
すぐに頭を切り替えて、インタビューを開始した。


『おはようございます、首相』
「あ、ああ。おはよう」

『そちらの絆創膏は?』

「…い、いや、昨日、ちぐ…つ、妻を怒らせてしまってね」


なるほど、夫婦喧嘩か――と、得心するミレイ。
大方ひっかかれでもしたのだろうかと予測する。
これ以上この話をしていてもしょうがないと判断し、
予定通りの番組進行を開始した。



==========================================================

コードギアス 反逆のルルーシュR2  

Turn25.5「粛清 の 咲世子」

==========================================================



――日本国首相・扇要。

魔王ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがゼロによって打ち倒された後に、
混迷を極める日本国を纏め上げるべくゼロによって選出された人物。
戦時中、黒の騎士団では事務総長としてゼロの傍らでその辣腕を振るっていた
――というゼロ自らの説明により、彼が新生「日本国」の首相となることは
拍子抜けなほどにすんなりと受け入れられた。

日本人にも、ブリタニア人にも、その他の各国の人民にも。

一刀の元に悪逆独裁皇帝ルルーシュを切り伏せ、世界を正したゼロ。
その彼の腹心ならば、と世界の誰もがそう思ったのである。


首相の仕事は多く、過酷である。

「戦い」という判りやすい方式が取られなくなった分、
「話し合い」というテーブルの上で各国が戦いを繰り広げられるようになった。

扇はそれらの公務を順調にこなしていた。
毎日積極的に各国首脳との会合に参加し、
世界を正しい方向へ導こうとしていく。

ゼロ本人のように華麗に物事をこなせるわけではなく、逆に不器用にさえ見える首相。
自身の休みを極限まで削り、日本の建て直しに力を割く。
日々疲れが蓄積していくようで、やつれていくように見える姿が
かえって人々の共感を呼んだ。

「ああ、この首相は日本人のために自身の身を削って戦ってくれているのだ」と。



==========================================================



バタン……。

首相官邸内、人払いのされている総理執務室に入ると、
扇は後ろ手に扉を閉めた。
そのまま疲労の度合いを息の長さで示すように大きなため息をつき、
電気も点けずに扉にもたれかかるようにしてずるずると床に腰を下ろす。
毛足の長い絨毯にスーツの尻が沈み込んだ。

固く目をつむり、頭を垂れて再度のため息。
身体のあちこちが軋むように痛みを訴えているのが判る。

今日はEU諸国との折衝に半日を費やした。

人の命を直接奪う戦争はゼロによって止められた。
しかし世界は未だひとつにはなりきらない。
それぞれの国ごとに思惑があり、自国を潤したいという欲望がある。
その戦いの場は「知能戦」への以降を余儀なくされた。

腹の探り合い、世界平和へと向かう中でも少しでも有利な条約締結を――。
ナイトメアフレームで切り結ぶのとはまた別の、
「化けもの」とでも形容すべき世界がそこにはあった。

そんな中に放り込まれた。
黒の騎士団であった時分は「事務総長」と肩書きを持っていたが、
その頃の下の人間をなあなあとまとめていれば良かった時とは大違いだった。

自分の発言に責任が圧し掛かる。
自分だけでなく、日本全体に対する責任が。



(ゼロがいればなあ……)



スーツが皺になるのも構わず、床に座り込んだままで扇はそう独りごちた。
ゼロは組織の運営をほぼ独りで行っていたことを思い出す。

武器の調達、対外交渉、撤退ルートの確保、はては自ら戦闘に参加をして。
それらの成果がギアスという卑劣な能力によって得られたものと聞いた。
詳しいことは知らない。

自分はその後ろで彼を見ていれば良かった。
それがどうしてこんなことに。何故俺が――という思いが脳裏に浮かぶ。


その思考を読み取ったように、ゆらりと窓際のカーテンが揺れた。
それまで欠片も気配の無かった執務室に、人の気配が突如として現出する。

全身を総毛立たせ、こわばった顔でカーテンを見やる扇。
その表情に、普段国民の前で見せている穏やかな貌は無く。
天敵、あるいは捕食者に追い詰められた
小動物のような絶望感が滲み出ていた。

「……っ」

頬を伝う冷や汗を拭うでもなくガチガチと歯を鳴らして震える。
そんな恐怖を意に介した様子を見せず、
恐らくは窓際に控えていたのであろう、



――シックな色合いの給仕服。
――ボブカットの女性が歩み出た。


「お疲れ様です、扇首相」


視線は怯える扇を真正面から見据えたまま。
ゆっくりと口を開き、彼女――篠崎咲世子――は、
ごく僅かにだけ頭を下げた。

恐怖に引き攣る扇の顔。
それを見てか、咲世子の唇が薄く笑みの形に曲げられる。

「では、扇首相。明日のスケジュールですが」

しりもちをついたような格好のまま座り込む扇を無視して、
咲世子は執務室の机を指すように掌を広げる。
視線を誘導される扇。

扇首相の執務机の上には端末が1台、加えて様々な書物、
ファイリングされた資料などが山のように積まれていた。

「明日は10時より本日に引き続きEU諸国との会合、その後」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

事務的に予定をそらんじる咲世子に、慌てた様子でストップをかける。
扇は立ち上がると歩み寄り、「参った」と言いたげに身振りをした。

「きょ、今日は会議詰めで疲れているんだ。勉強はまた今度――」


ヒュッ


眼前を光が過ぎったようにしか扇には知覚出来なかった。
次いで、鼻の頭に灼熱感。生温い鉄さびの味。
口へと垂れて顎をつたいボトボトと落ちていく血液の流れを感じて、
ようやく自身が斬りつけられたことに気付く。

「ひぎっ!?」

咲世子の指先にはひし形をし、
指を通すようにリングのついた両刃の刃物が摘まれていた。
クナイと呼ばれる忍者の道具の一種であるが、それを扇が知るわけは無い。
痛みに耐えかね傷口を両手で押さえながら、再度その場にうずくまった。

高価そうな絨毯に血の染みが次々と落ちていく。
汚れた絨毯に咲世子の心が少し痛んだ。

「い、痛、あ、ぅぅ……」

見下ろす格好となった扇の耳にはスケジュールが届いているか怪しいが、
咲世子は構わず明日の予定を伝えていく。
伝え終わったところで、ハンカチでようやく止血を終えた扇と目を合わせた。

「扇首相。休みなどしては明日に差し障りが出ます」
「……」
「本日そちらの資料にまず目を通し、
明日の議題に合わせての発言をまず作成して頂きます」

冷淡な声。
促されるままに執務机に向かう扇。
膨大な量の資料との格闘、発言内容の作成、想定される質問、
意見に対する回答の作成。
それらを毎日、毎日、毎日毎日毎日。
咲世子の監視の下で行うことを強制される。


――それが、日本国首相・扇要の日常であった。



「もう3週間も千草…ヴィレッタに合っていないんだ。家に、か、帰してくれ!」

自身の置かれている状況に不満が大きいからか、
喉元過ぎればなんとやら、というものか。
扇要は勉強を始めてからも頻繁に異論を唱える。
鼻の頭の傷は存外に深く刻まれたらしく、
貼られている絆創膏には早くも血が滲んでいた。

「お休みならば差し上げている筈です」
「し、しかし! 最近は1日も……こんなことは…無理だ」

扇に出した条件は1つ。
『明日の公務の勉強が終われば家に帰っても良い』というもの。
……といっても、毎日を多忙に過ごしている日本国首相である。
ルルーシュや神楽耶のような、カリスマや圧倒的な知性などがあれば
そもそもこのような資料は必要ない。

(ルルーシュ様ならば、
こんな資料も僅かな時間ですべてご自分でお集めになられる)
(さらに数十通りの展開を予測し、イレギュラーへの対処も計算に入れる)
(それに比べればなんと容易い…!)

脂汗を垂らしながら書類のページをひたすら繰っていく扇の姿に、
咲世子は無表情を崩さずに怒りの念を向ける。

膨大極まる資料はひとえに「扇要」という人間に日本国首相として見せる為に
必要不可欠な多さであった。

いかに凡人であっても時間をかけて読み込んでいけば、
ひとまず一日で首相本人に力が無いことを悟られるという事態にはならない。
よって、何とか日本国首相としての威厳を保っていられるという寸法である。

このため扇は大体2週間に1度、
公務が少ない日くらいにしか家へ帰ることが許されなかった。

咲世子の態度が軟化することはない。
扇がなんと言い出そうが、にべもなく撥ねつける。

「首相には、それ相応の能力が必要です。貴方にはそれが圧倒的に足りない」
「こ、こういう事はっ、もっと、っ、得意な奴がやるべきで――」

無意識か。暗に、自身は楽をしたいと取れる発言。
上には立ちたい。しかし責任は回避したい――と、咲世子には聞こえた。

刹那、再びクナイが飛んだ。
絆創膏を易々と貫き、傷を抉るように再び扇の鼻の頭を一文字に切り裂いて
――部屋の壁に深々と垂直に突き立つ。

「ぎひっ、い、いぃぃ!?」

またも顔面の下半分を鮮血に染め、のた打ち回る扇。
用意した資料の紙の白色が赤く塗り替えられていく様を見やりながら、咲世子が口を開く。

「耐えられなければ失脚して頂いても結構です、首相」
「…………ぇ?」

二重に切りつけられた為、バツ印の裂傷となった傷口を押さえながら扇は目を丸くした。
手に入れた地位を無くしてしまうのは惜しいが、千草の元に帰れる――、
そう言外に聞こえるほどに表情が気色ばむ。



「ただしその場合、

『英雄ゼロを私的に処刑しようとした黒の騎士団幹部』

という映像が全世界に発信される運びとなりますが」



そして、直後に蒼白となった。

「……っ、な、何を、言っているんだ……?」

歯の根が合わないほどに震えながら、
扇はやっとのことでそう言葉を搾り出した。
咲世子は懐から一枚のディスクを取り出すと、掲げてみせる。
反射面に映る、自身のいびつに歪んだ表情を見ることになる扇。

「ディートハルト・リートのライブラリ内に斑鳩内で撮影された映像がありました。
 これを編集して公開します」

「――……う、裏切ったのは俺達じゃないっ……!
 ゼロの、る、ルルーシュの方だ……!
 仕方なかったんだ、シュ、シュナイゼルが……! 俺は、悪くない……っ」

狼狽。
とりとめもなく言い訳を連ねる。
その言葉を無言で聞きながら、ディスクを仕舞うとポケットに手を入れた。

……――カチリ。

スイッチの音と共に取り出したのは、小型録音機材。
言葉にしなくても伝わる。扇の顔色が青を通り越して白くなった。

「只今の発言も記録させて頂きました」

そう告げて、きびすを返す。
執務室の扉を開け、扇に背を向けたまま言葉を続けた。


「英雄を、反逆の象徴を敵に売り払い放逐した騎士団。
 それがのうのうと重役として日本に居座っていると知ったら、
 日本人は、世界は――――貴方たち夫婦を許すでしょうか?」


くるり、と振り返った時の。
それまでの職務に忠実なメイドとしての冷静な表情とは違う凄絶な笑みに。

自身の逃げ道は無いと知り。
逃げれば立場どころか命も無いと知り。

「あ、あぁぁあぁぁぁ……ぁ……」

……そも、帰る国が無いと知り、日本国首相・扇要はその場に崩れ落ちた。
独り残された広い部屋の中に、
男一人の絶望の声が止まらずに響いていくことを止める者はいない。

バタン、と扉が閉じると同時に、恐怖のあまり――意識を手放した。



==========================================================



トゥルルル、トゥルルル……。
……――ガチャ。


「はい、こちらゴッドバルト農園」


顔の左半分を仮面で隠した偉丈夫、ジェレミア・ゴットバルト。
かつてルルーシュ・ランペルージの忠臣として名を馳せた男は今、
広大な農園の主として第三の人生を送っていた。

「私です、ジェレミア様」
「君か」

穏やかだった顔が、途端に武人へと変貌する。
電話の向こうから聞こえる咲世子の報告を、頷きながら理解していく。

「……本当ならば、すぐにでも喉笛を掻き切ってやりたい所ですが……」
「だが、それはルルーシュ様が望むまい」
「――はい」

ジェレミアは苦渋に満ちた表情のまま歯噛みする。
唯一の主が命を落とす最も大きな要因を作った男。

殺しても飽き足らない。

そう思いながらも、主が自身の命を賭して世界に標した平和への道筋を、
途切れさせるわけにはいかなかった。


「せいぜい彼には、立派な日本国首相になってもらわねばな」
「ええ、本当に」


忠臣たる2人に出来ることは、その平穏を崩さないように勤めること。
――崩さずに、真綿を締めるように追い詰めていくことを選んだ。
まずは、一人目から。


「済まないな、私に隠密行動が出来ない故に。君には迷惑をかける」

「いいえ、気になさらないで下さい。
 お送り頂きましたオレンジ、美味しゅうございました」

「アーニャが頑張ってくれているからな」


労いあう2人。
話す言葉がなくなり、しばしの沈黙の後。


「オール・ハイル・ルルーシュ」


どちらともなく同時に呟いた言葉は、寸分の違いなく同じもの。
今は亡き主君に変わらずの忠誠を誓い続ける言葉であった。




~おわり~


スポンサーサイト

テーマ : コードギアス 反逆のルルーシュ - ジャンル : アニメ・コミック

<< 【冬コミ】3日目東W-42a【参加】 | ホーム | オフセはアニメ2期の時に完全版ってことで >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。